優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。
ただ彼の足元でぺらペらとめくれるノートには、優大くんの寝顔が描かれている。
あまりに綺麗な寝顔だったから、起きるまでと思って描いてしまったものだ。
近づいてくる彼の瞳は、外の街灯の淡い光でしか輪郭が映っていない。
でもその瞳に私しか映っていないのだと思ったら、心臓が飛び跳ねた。
「い、嫌がらねえなら、するぞ」
「するって、……」
「キス」
鼻が当たりそうなスレスレまで近づいてきて、私は必死で言い訳を考えた。
でも、もう無理だ。
美術室で絵を描いている時も、図書室で絵を描いている時も、私の頭の中は優大くんのことばかりだったから。
優大くんのことを考えながら絵を描くときに、逃げていた気持ちとか、自信がない意気地なしの自分を受け止めてくれた優大くんのことの気持ちが嬉しいとしか思えなかったから。
「……い、いいです、して、いいです」
言いながら下を向いてしまったら、眼鏡を外された。
眼鏡が当たったことを、まだ覚えていたらしい。
下を向いていた私を、屈んで覗き込むように顔を近づけてくれた。