優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。
その日の、彼の小説の更新ではまた人が死ななかった。
けれど初めて、死んだ人に涙を流す主人公の描写が書かれた。
『人は簡単に死んだら、だめだよな。やっぱ』
まるで後悔するかのような主人公の言葉は彼がこぼす様に落とした声のように思えた。
『意見が合わないってだけで俺は小説の中で親父を殺そうとしてしまった。できなかったけど、でも母さんが死んで、婆ちゃんも死んで、たった一人の家族を俺は小説内でも殺そうとして最低な奴だ。意見を聞いてもらえなくても、今度は今度は逃げないでちゃんともっと話をして、俺の気持ちを聞いてほしいと思った』
『俺はもう人を殺したくない。
綺麗な心の女の子に出会ったんだ。もっとはやく声をかければよかった。
あの子と一緒に授業を受けたい。一緒に帰りたい。一緒に登校したい。チョコレートをもらいたい。お返しを何にしようか悩みたい。もっとキスが上手くなって眼鏡を外さなくてもできるようになりたい。
今日、一緒に帰って手汗が半端なくてやべえって思ったんだけど、伸びた影までが仲良く手を繋いでて、めちゃくちゃ幸せだったんだ。
俺、もう一回、オヤジとぶつかってみる』