優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。
ホラー小説なのに彼は何を書いてるんだろう。
案の定、感想欄は『日記を読みたいわけじゃないんですけど』っという辛辣で当たり前な言葉が並んでいた。
こんなに読んでくれてる人がいる。彼の言葉にはきっと飾らない魅力があるんだと思う。
だからできれば最後まで書いてほしいな。
その次の日、万年カテゴリーランキング二位だった彼の小説は、愛の力で八位に転落したらしい。なぜか嬉しそうに報告された。
けれど、その夜の話し合いは駄目だったらしい。
平行線のまま、無駄に過ぎていく時間に、彼も少しだけ焦っているように思えた。
「あのね、優大くん」
「ん?」
「私、生意気に思うのですが」
放課後の図書室。
私たちは18時に部活を終えたあと、図書室で19時まで勉強して帰るようになって数日。
楽しみにしていた水泳の授業も結局あと一回。今年は二回しかなかった。
そんな時に、隣で教科書に落書きをしていた優大くんに私は提案した。
「その、優大くんの言葉にもっと説得力を持たせた方がいいんじゃないかなって」
「説得力?」
「ほんとうに、生意気なのですが……」
言っていいのか悩むけど、生傷が絶えない彼が本当に心配だった。