優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。
七、遠回り、空回り。
学校は夏休み前の期末テストが始まる。
私は家では描けないので、昼休みと放課後を使ってちまちまと絵を描く。
時々それを彼が覗きに来たが、相変わらず生キズは絶えなかった。
虐待じゃないかと何度か親も呼び出されたが、本当に親子喧嘩のようでおじさんの顔も、猫に引っかかれたように傷だらけだった。
「あのね、その、優大くんの言葉が偶にマシュマロみたいに軽いっていうか、その説得力に欠けるの」
「えー、まじで? どこどこ」
「うー……」
そんなところです、とは言えなくて困る。
優大くんは楽しいことは全力で楽しむのに、勉強とか親御さんとの話し合いは全力で回避している気がする。
テストの結果だって驚くぐらい悪かったけど、ノートも取らない、授業中は教科書に落書きか居眠り。予習はしない、宿題は写す。
そんな彼が成績が上がるわけもないし良いわけもない。
「だからね、例えば勉強を頑張って成績をあげたり、遅刻しないとか授業中寝ないとか、頑張ってる姿を見て、認めてもらうことも大事じゃないかな」
「なんで認めてもらわねえといけねえの。我儘は言ってないし」
転校するまでもう一か月もない。テストが終わって、お別れパーティが開催されれば、二学期からは隣の市だ。
親御さんと話し合いが進まない以上、転校は避けられない。
「でも転校したくないって誰も信じてくれてないのは、やっぱり行動が足りないんじゃないかなって、生意気だよね。でも、私もこのまま転校は嫌だから、その、一緒に頑張ってほしいなって」