優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。
私は地元の一般的な普通科だ。
なのでクラスで真ん中ぐらいの成績でも安全圏。一応、お母さんが夏休みは塾に通いたいなら通っていいっ言っていたので、小心者の私は通うつもりだ。
でも優大くんのこの成績では、工業高校は大丈夫なのかってちょっとだけ心配になるんだ。本人も頑張って寝ないように頬を叩いたりしてるけど、公式を覚えようとしたら寝ちゃうし。
「俺の言動が軽いっていうのは、なるほど。ちょっとわかった。つまり『俺が学年一位になったら転校させるな』って条件を突きつける感じだな。よし。分かった」
「本当に分かった? 多分、ものすっごく勉強しちゃうよ……っ」
彼の落書きだらけのノートを見ながら息を飲む。
私に教えることができるか不安になるほど、ノートが落書き帳にしか見えない。
「まずは私のノートを教科書見ながら写していってほしい。ノートの右上に教科書のページが書いてるでしょ? それ見ながら教科書も見たらテスト範囲の復習になるから」
「ほおほお。蕾、字が綺麗だな―……」
「真面目にやってねっ」
私のノートを「落書きがない」と驚きながら写しだした優大くんに、ため息が出てしまう。
同じ受験生なのに、彼には緊張とか不安はないのかな。
「なー、蕾」