優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。
二、プールの塩素の匂いと美術室

 美術室へ入ってすぐに気持ちが切り替わった。

 そうだ。プールの波が描きたいんだと思い出して、窓辺に立った。

 冷房が効いた美術室からはプールが見えない。ので、写真を撮ってから描かなきゃいけない。じゃあ今日は、何もできないのかな。何か書こうかな。

キャンパスの前で座り込んで考える。

 居心地はいいんだ。今日は部活生は一人しかいないし先生も滅多に来ないから。
美術室は私と同じで地味だ。教室と同じように机が並べられて、ほとんど美術部って感じがしない。ロッカーの上に石造の生首や先生が作った造形物が置かれてるのが唯一美術って感じぐらい。

「三年生って水泳の授業、三回しかないって本当ですか?」
「そうだよー。生理で二回休んだらレポートみたい」

 二年生の唯一の部活生である百合ちゃんが鉛筆を削りながら聞いてくる。二年生はまだ殺伐としてなくていいなあ、と呑気に思えた。

「えー。絶対レポートの方がいいじゃないですか!」
「そう? 私、プールの塩素の匂い好きなんだよね」
「私は断然、レポートです。水着、恥ずかしいです」
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