優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。

 一階のエレベーターを上がると、すぐにポストカードが売っているショップが目に入ってきた。少しだけお小遣いを持ってきたから、時間があったら何か買おう。


「やべえわ。頭の中、ひまわり畑になった。勉強した英単語が落ちていく」
「私、英単語の暗記カード持ってきたよ。帰りの電車で一緒に勉強しよう」
「流石、俺の蕾。一緒にあそこの記念パネルに顔を入れようぜ」


ひまわり展入り口前に、二つのひまわりの真ん中に顔を出すパネルが置いてある。
ひい。どうしてひまわりの顔にするの。ひまわり畑の中に顔を出すならまだよかったのに。


「あはは。部長、やりましょうよ。私、デジカメ持ってます」
「や、私は、その」
「つーぼーみー」


 すでにパネルから顔を出している優大くんが大きな声で名前を呼ぶので、これ以上は恥ずかしくて急いで私も顔を出した。

 百合ちゃんに見せてもらった私の顔は、茹でタコそのもので恥ずかしい。

「いい? 優大くんに特にいうけど観賞中の私語は厳禁よ。追い出される可能性もあるから、静かに。いいわね」

「い、息はしていいですか!」
「……何かふざけたら、すぐに摘まみだすから」

 普段、温厚で優しい先生が笑いもせずにそういうと、優大くんは何度も何度も頷く。

 日頃毎日怒っている織田先生より、怒らない飯島先生の方が怖いらしい。

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