優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。



いきなり絵を描いてって言ってきた人。

パパっと描いて、なんて失礼なことを言う人だった。

私がからかわれたからってプールで殴り合いの喧嘩をしちゃう人。

 明るくて、言葉の端々がちょっと軽くて、でも私に触れる時、真っ赤になってくれる人。
勉強は、要領がいいからもっと集中力を付けたら、成績もぐんぐん伸びていくと思う。


私に、色んな色の感情をくれた人。
顔をあげたら、綺麗な空があるよって、キャンパスしか見ていなかった私に本当の空の色を教えてくれた人。

人を好きになるドキドキを、沢山くれた人。


「じゃあ、部長、優大さん、また」
「気を付けて帰るのよ」

 百合ちゃんはお母さんが迎えに来た車に、先生は一旦、学校へ帰っていく。
 私と優大くんは駅の改札口で、お互いを見つめた。

「家に送っていくよ。一緒に行こう」
「うん」

 帰りたくないな。
 その言葉を飲み込んで、重い足を引きずりながら家へ戻る。

 まるで足にローラースケートをつけているように、家に着くのが早く感じる。
 ゆっくりゆっくり歩いているのに、優大くんとの時間が短くなっていく。

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