優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。
優大くんは時刻表と目的地を交互に見ながら携帯で写メを取る。
「うん。プチ家出だから。本当は俺、蕾をさらって一緒に引っ越したいし」
本心かわからないぐらい、軽い発言に驚いていたら携帯を渡された。
「でも蕾が帰らないと、飯島先生に迷惑かけちまうから、友達とご飯食べるとか適当な嘘を言って遅くなるって連絡しといていいよ」
「う……」
「帰したくないから、本当に浚ってしまうかもよ」
冗談みたいに零れ落ちる彼の、軽い言葉。
でも分かった。それが本心だってわかった。
だって夕焼けと同じ色に顔が染まっていたから。
「あの、……もしもし、お母さん?」
『あら、どうしたの? 駅まで迎えがいる? 今、カレー作ってて』
忙しそうなお母さんに、すごく胸がドキドキしながら私は声を絞り出した。
「美術展で見たひまわり畑を見てくるので、帰りは遅くなります」
『え? ひまわり畑ってどこ』
「植物園の奥のとこ。友達と一緒だから大丈夫」
「つぼみー、バス来たぞ」