優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。
「ひっ」
電話の向こうのお母さんに、優大くんの声が聞こえていないか焦ってしまった。
友達がそんなに多くないことは親だって知っている。
なのに男の子と遅くにひまわり畑って絶対にいい返事が来ない。
でも、でもこのまま優大くんと離れたくなかった。
「バスが来たから行くね」
『もーっ ちゃんと20時までには帰って来なさいよ』
機嫌が悪くなった声にひやりとしたけど、なんとか許可はもらった。
携帯を返しながら、汗をぱたぱた仰ぐ。
「優大くんは、連絡しないで大丈夫なの?」
「ああ。家出だし。行こうぜ。植物園、閉まるの18時だって」
バスに乗り込んで、二人で手を繋いで一番後ろに座った。
誰も乗っていないバスは、座席から伸びる影が存在感を大きく主張しているだけだ。
バスは夜に向かっていくように、段々と茜色の空が夜の色へと染まっていく。
「俺さあ、ひまわりの絵はいいとは思ったんだけど、しゃべるな、触るなって縛りが苦手だった」
「あはは。優大くんには、確かに静かな場所は似合ってないかも」