優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。
「うん。俺は触りたいし、しゃべりたいし――離れたくない」
優大くんの顔が近づいてくる。
男の子なのに、こんなこと言ったら失礼かもしれないけど、綺麗な瞳にサラサラの髪。
絵画の中に並んでいたら、見とれて立ち止まってしまうかもしれない。
そんな彼の顔が近づいてきて、少し顔を傾けたので、目を閉じた。
なのに、焦った彼は眼鏡を外し忘れて、唇ではなく眼鏡と触れていた。
「くっそ。どうしたら眼鏡外さずにキスができるんだ!」
「……これから沢山したら、上手くなるかも」
「いやあ、言いながら真っ赤にならないで。無理して言うなよ」
熱くなって頬を両手で抑えた。
だって、キス、嫌じゃないんだもん。優大君が一番近づく瞬間、すっごく胸が甘くなって嬉しいし幸せなんだもん。
「このまま、バスで二人でどっか逃げちゃいたいな」
「……無理だけど、でも私もそう思うよ」
逃げてしまいたいけど、目を閉じると心配する大人たちの顔が浮かぶ。
放っておいてほしい、自由にさせてほしいって思うのに、大人は私たちが大人になるまで目を離さずに守ろうとしてくれる。
大人になりたくないと駄々をこねても、無駄なんだ。
バスに揺られながら、優大くんの肩が時折当たるのが少し照れ臭かったけど、でも幸せだった。