優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。
「……あの、終わりましたけど」
 三つ編みを結び直して、ずれた眼鏡を指先で上げる。

近くで見ると、陣之内くんは大きくて少し怖い。声も大きいし、何だろう。一緒に居たら目立ってしまいそうでやはり苦手だ。

「あのさあ、お願いがあるんだけど」
「なんでしょうか」

「パパっと、こう、ぐわーって感じの絵を描いて欲しいんだ。ぐわわーってびちゃびちゃって血が飛んでて、きゃーって感じの」

「……はい?」

 オーバーリアクションで彼が両手をバサバサと広げたり、ムンクの叫びみたいに頬を抑えたり、語彙ではなく体で伝えてくる。けど、さっぱりわからない。

「えっとさ、ほら、俺って結構、なんでも自分でできるんだよな。勉強だってスポーツだってやろうと思えばそこそこできるし、格好いいだろう?」

 自分で言ってしまうのはどうかと思うけど、話が進まなくて困るので頷く。

すると機嫌よくしたのか、ズボンから携帯を取り出して液晶画面をスライドさせだして驚いた。

うちの中学は携帯の持ち込み禁止で、持ち込む場合は先生に提出、もしくはこっそり鞄に忍ばせて電源を入れないとか、皆徹底しているのに。
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