優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。
背中の服をぎゅっと抱きしめながら言うと、「それはいやだ」って笑った。
「離れたくねえよ」
「うん」
「もっと一緒に居たいよ」
「……うん」
「もう、一緒の教室で授業受けられねえし、美術室に侵入しても、蕾はいねえんだよ」
「う、ん」
「無理。蕾可愛いから、絶対無理。悪い男が寄ってくる」
どこが可愛いのって言おうとしたのに、涙が口の中に入ってきて言葉を奪っていった。
一緒に居たい。
帰りたくない。
離れたくない。
行かないで。
もっと一緒に居たいよ。
受験なんてしたくない、テストも嫌い、先生の馬鹿、服装検査なんて時間の無駄。
工場なんて潰れないで、最先端技術なんて興味ない。
頭の中は、きっと皆に知られたら軽蔑されてしまうぐらい我儘や不平不満に満ちていた。
「本当にこのまま逃げていい?」
「いいよ」
連れて行って。
私がそう答えると、優大くんは笑った。
「蕾は俺のブレーキ―にならないとだめじゃん。止めてよ」
「いやだ。連れてって」