優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。
「はあ。やべえ。家に持ってかえりてえ――ってぇっ」
優大くんが抱き着こうとした瞬間、おじさんの拳骨が頭にめり込んだ。
「あの、あの、頭は殴ると馬鹿になてしまいますっ」
「蕾……っ」
「もう手遅れだ。遅くまで連れまわされてすまなかったね。乗って。送っていくから」
「くそじじい」
おじさんが助手席をすすめてくれたけど、優大くんは荷台の上で毛布に包まっている。
私も荷台に……って言ったけど、荷台に人は乗せたはいけないからと断られた。
優大くんが乗っているのに。
トラックは綺麗で真新しく、新品の革の匂いがした。
「明日の引っ越しで使うから、ついでに買ったんだ」
言われてみれば、荷台にはすでに机や本棚やベットの足などが乗っている。
「……うちの息子は、」
おじさんはため息とともに小さな声でしゃべりだした。ほとんど独り言のようだ。
「家内が亡くなったのがまだ赤ん坊の時で、ばあさんに甘やかされて育てられたせいか世間知らずで、楽天家で、この先の試練を乗り越えられるのか心配だった」
「試練ってなんですか?」
「理不尽な状況だ。自分だけ不利な条件を突き付けられたり、自分の意志が通らなかったり」
「今の状況ってことですね」
理不尽で不利で自分の意志が通らない状況。