優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。

「ああ。だから反抗されて胸が痛いんだがホッとしている部分もある。あいつがどんな気持ちなのか、どう乗り越えてくれるのか、俺は見守るしかできない。俺はあいつの答えじゃなかったからな」

「……」


 今回の悪役を全部背負ってくれようとしている。
 優しいけど不器用なおじさんは、大切な子どもの今の状況に胸を痛めていないわけはない。

それは、優大くんも分かっている。

 彼の書いた小説の中で、唯一殺せなかった相手なのも、読んだ私は知っている。


「ばあさんが死んだのは一昨年か。あの時も声をあげて泣いていた。自慢ではないが優大は優しいし人を見る目がある」

「はい。とてもやさしいです。彼が教室で笑っていると、皆、とても幸せでした」
「君も。人の痛みを分かってくれる優しい人だ。すまなかったね」

 頭をポンポンとされて、ひまわり畑に置いてきた感情がまた芽生えだした。
 捨てても捨てても心の中で芽が出てしまう。

「は、オヤジ、なんで蕾を泣かせてんだよ! てめえ、車降りて俺と勝負しろ」
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