優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。
「うん」
「早く大人になろうな」
「うん」
「……早く大人になるから」
「うん」
涙はひまわり畑に置いてきたので、荷台から両手を伸ばす優大くんに私も背伸びして抱き着いた。
いつか、自分たちの責任で、自分たちの意志で、どんな不利な状況でも、諦めずに立ち向かっていく。
だからこの気持ちが永遠に、心の中で花を咲かせて行けますように。
優大くんを乗せたトラックが、小さくなっていくのを両手を振りながら見ていた。
どんどん小さくなり、交差点で見えなくなるまでずっと、手を振っていた。
「優大くんって、おばあさんを亡くしてから、遠足のお弁当が焼肉とおにぎりとか、スーパーのお弁当とか店屋物ばっかだったらしいのに、恥ずかしがらずに美味しいって食べてて、あの子良い子だなって思ってたのよね」
「……うん。とても優大くんは優しくて良い人だよ」
「確か……一年の時だったかな。母親が入院中でお弁当が作れなかったって男の子が、朝コンビニ弁当を持って来て先生に怒られたらしいの。その時、優大くんが庇ったんですって」
「それって、先生を蹴ったっていう事件?」
紗矢が言っていた気がするけど、本人からは聞いていなかった。
「そうそう。それよ。蹴ったのはどうかと思うけど、ちょっと頑固ジジイな先生だったからね。織田先生は」
「しかも織田先生っ」
二人が仲が悪い理由が分かった気がする。
それは名指しで小説内で殺されてしまった時期にあてはまるかもしれない。
「だからとても良い子だって知ってるわ。大切にしなさいね」
それと遅くまで遊ぶのは駄目よ、受験生なんだしねっとお母さんは小さく注意しただけで終わった。