優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。
『俺さ、そっちの工場には思い入れあるけどこっちの工場は別にじゃん? だから工業に入りたいわけじゃなくなったから、自分の展望を考えたわけよ』
「うん」
『そうしたらさ、織田先生? 大嫌いだったんだけど、なんか良いやつだったし、俺はもっと生徒から好かれるような先生になりたいなっとか思うわけよ。そうしたら普通科かなって』
すごい。難しい言葉を使って優大くんが自分の進路を話し出してる。
「優大くんが先生って素敵だと思う。私も大賛成」
『だろ? で、蕾は俺の可愛いお嫁さん。お嫁さんのためにマイホーム建てるぞぉぉ』
「……えっとまずは、受験という目の前の目標について頑張ろう」
彼の壮大な未来に私がいるのは嬉しいけれど、当面は受験勉強だ。
『そうだな。まずは俺、親も先生も黙らせるぐらい成績を上げてやるわ』
「うん。頑張ろうね」
自由が少ない私たちに残っている唯一の自由を、自分から放棄してはいけない。
誰かを好きということは、先生たちにも止める権利はないし理不尽な親の都合に振り回されることはない。
だから、心配されないぐらい、自分たちでしっかり考えて、迷ってもぶつかって、頑張って行こうって思う。