優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。
優大くんがいない夏休み、塾がない日は紗矢と図書館で勉強した。
優大くんが俺はやればできる男だからと成績を本当に上げてきたことも皆のやる気になったらしい。
毎日電話しているのに、ポストカードも一週間に一枚は交換している。
受験の先に待っているのは、紗矢も優大くもいない普通科の高校での生活だ。
優大くんのおかげでクラスの女の子たちとも少しずつ話せるようになったから、クラスの半数が同じ普通科に行くのは少しだけ安心してるけど。
でも私の世界の大部分を占めていた二人がいない学校で私は上手くできるのかな。
このクラスの半数が受験するってことは、何人か落ちてしまい可能性もあるってことで、ピリピリした空気がいつか生まれてしまうんじゃないかな。
いろんな不安を隠したくて、私はひたすら勉強に没頭した。
『会いてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ。さて問題です。俺は何文字『え』を書き込んだでしょう。正解したら、会いに行こうかな』
そんな短い文のポストカードは、大輪のひまわりが一輪飛び出そうなほど大きく映っている。
「17文字だよ。引っ越しの片づけは終わったの?」