優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。
夜、ポストカードを片手に布団の中に潜って、電話をしながら尋ねた。
「大体終わったかな。塾と家と牛丼屋とスーパーの往復で息が詰まりそう。一回、栄養補給に蕾に会いに行くわ」
「いっぱい行ってるじゃん。私は毎日塾と図書館だよ」
会いに来るって言うのは、駄目だよとは言えないし会いたいしで、複雑だったので触れないようにした。
受験で忙しい今、そんな浮ついたことを言っていては……。
『老けた考え方だな』
『真面目って言うか固い』
ふわふわした率直な優大くんの言葉を思い出した。
「本当に優大くんの負担にならないなら、会いに行きたい」
毎日勉強を頑張ってるんだ。少しぐらい会いに行ってもいいんじゃないかな。
なんて、言いながらも根強く大人に良い顔をしてきた老けた考えの私には、少しだけ罪悪感はあった。
『いや、俺が行くよ。なんか使ってない家って傷むらしくてさ。定期的に掃除とか片づけとか風を通したりするらしいんだよ。親父にやらせて、俺は蕾と図書館デートする』
「ほんと!?」
嬉しくて叫んでしまって慌てて口を押えた。危ない。お母さんたちに気づかれてしまう。 優大くんも電話のむこうで、ククッて笑っている。
「ああ。会いに行く。だから待ってて。良い子で勉強してろよ」