優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。

淡く光る数匹の蛍を見た。触れたら消えてしまいそうな淡い光。
触れられないからこそ、美しいと眺めてしまう。
 おじさんの話では年々数が減ってきているという。
でも、工場が閉鎖されたら汚染水も減るので、きっと綺麗な水になれば触れるんじゃないかなって。

工場が無くなるのは寂しいけど、けど良いこともほんの少しだけある。

「蕾、俺ほんと頑張るから、ハグしていい?」
「お、優大くんが英語を使え出してきてる!」

なんて照れて誤魔化すと、大型犬が飛び掛かるように抱き着いてきた。
優大くんの匂いは好き。よく干されたお日様の匂いがする服。

離れたくなくて私も強く抱きしめ返す。

私こそ、優大くんのパワーをもらわなきゃ。

抱きしめて、その日、初めて眼鏡をしたままキスができた。
嬉しくて月まで届きそうなほど高く、私たちはジャンプしたのだった。


そして夏が終わり、ポストカードを全部使い終わるころ、彼からの連絡は突然途絶えた。


『ごめん。学校が始まったら塾の時間が遅くなった。10時過ぎに帰るから、電話は難しいかな。土日にしよう』
『朝も自習の時間があるらしくて、おはようメールしたら蕾を起こしちゃうので我慢する』
『補講が始まったし復習プリントの宿題の量がまじ半端ねえっす』

学校が始まった時点で、日に日に忙しそうな内容に変わり、新しい環境に慣れるまでは大変だからと私も言った。
今は学校や環境になれるのを優先してって言った。

けれど本当にぴたりと止まると思わなくて、焦ってしまう。


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