優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。
九月に入ってすぐ、優大くんの家は取り壊された。
大型クレーン車が、屋根を抉っていくのを見ながら、ああ、彼は家の風通しに来るという理由が無くなってしまったんだなって気づく。
これで会いに来る理由がなくなってしまった。
私は九月の学力テストで学年9位になった。
初めての一桁に、先生も親も喜んでくれた。
『これから夏休みに努力した奴らが後ろからお前を追い抜かそうとしてくる。だが三年間努力してきたお前と付け焼き刃の努力の格はちがうのだと見せつけてやれ。ここで踏ん張れ』
テストの平均点がぐんと上がって、皆も勉強しているのが分かる。
ここで焦るな、お前には三年間の努力がある。
そう安心させてくれたのが、優大くんの大嫌いな織田先生だったのも、いつ彼に伝えられるかな。
運動場にモザイク画で紅龍と青龍が描かれた看板が飾られ、運動会が終わる。
三年はマラソン大会が免除なので、『あと3周――っ』と運動場で織田先生が叫んでいる時も三年は受験対策問題をひたすら解いた。
その間、優大くんからの連絡は途絶え、勇気を出して何度かメールしたけど返事が返ってこなかった。
あんなに毎日連絡したのに、既読がつかなくなったメッセージを見るのが辛くて、私も連絡はやめた。