優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。
そこで枯れた葉が全部風に攫われて冬になると、紗矢の私立の推薦入試の合格通知が来た。
私も紗矢の市立を滑り止めで受験する。紗矢の受ける私立は、合否ではなく点数別で、特進クラス、進学クラス、普通科に分けられる。
特進クラスは学費免除になるから、お母さんがもし特進に受かったら通ってもいいと言っていたけど、特進は200人中40人しか選ばれないクラス。
紗矢も推薦だけど普通科クラスに入ることになっている。
「……あのさあ、蕾」
「ん?」
「……んんー、んんんんんん」
「どうしたの?」
合格して勉強から解放されたはずの紗矢が難しい顔をしていた。
聞いても唸るばかりで、私も首を傾げる。
「いや、やっぱいい。私の勘違いかもしれないし」
「……そう?」
紗矢がはっきり言わないなんて初めてだったから少し驚いたけど、それっきりその話題は終わった。
優大くんにメールしようか悩んだけどやめて、代わりに私はシャーペンを握る。
二学期が終わるころ、彼の家には『サンフラワー花摘』というアパートができた。二階建ての六室あるアパートだった。
気づけば彼と過ごした日数より、連絡しない日数の方が多くなった。
私たちはきっと終わってしまったんだと思うけど、でも私は受験が終わったら勇気を出して彼に会いに行こうと思った。