優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。
連絡できないでごめんな、って額をこつんと当ててきた。
「紗矢に学校で会った時、急いで逃げたんだ。やべえ、もし特進受からなかったらダサいって」
「知ってたら、私も死ぬほど勉強して一緒の特進に入りたかった!」
「いやあ、枠が少ないから、いくら蕾でもライバルが増えたらなあって」
それほど優大くんは切羽詰まっていて、余裕がなかったってことだろう。
「なあ、蕾」
繋いでいた手が離され、私の頬に触れた。
「俺、まだ彼氏でいい?」
「……」
「駄目なら、彼氏にして。すげえ好き」
「……」
軽くて一見いい加減に見える彼の言動だけど、マシュマロみたいに甘い。
私は怒る気持ちも消え去って、目の前の甘くて軽くて、いい加減で一生懸命で純情で壊れやすい彼の心ごと抱きしめた。
「私も、優大くんが好きです」
言いたいことは山ほどあったけど、まずはそれから。
泣き出しそうに、耳まで真っ赤にしている彼を見たら、何も言えなくなってしまった。
連絡できなかった時間を埋めるように、これからずっと一緒にいよう。今はそれだけを想う。
私たちは互いの背中にしがみついて、駄菓子を買いに来た小学生に再び悲鳴を上げて逃げられてしまうまでずっと、抱きしめていた。
FIN