優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。

「お願い。何でもするから。お金は今月映画行ったからすっからかんだけど、あ、ヌードモデルとかしていいよ。どこまでも脱ぐし」
「き、きゃー」
　上を脱ごうと蛍光ピンクのシャツが見えて悲鳴を上げてしまった。タイムイズマネーという英字が、見たくもないのに見えてしまう。

「ここに居たのか、優大」
　作業服のオジサンがいつの間にか美術室のドアの前に立っていてドアを半分開けて、私たちを見ていた。

そっちの方が怖くて悲鳴を上げそうになったけど、先に陣之内くんが立ち上がった。


「なんだ。やっぱ親父が来ちゃったか」
「俺で悪かったな」
「いや、良いけど。帰りはラーメンかな」

　不意に寂しそうな顔をするけど、頭を掻きながら無理に笑って誤魔化す。そして私に手を振ってきた。

「親父来たからごめんな。とりあえず、イメージ図を描いてみるからよろしく」
「ほ、本当に無理です、止めてください」

「あーあ。先生なんか言ってた？」
「……その服装のことかな」
「ちょ、」

　全く私の声を聞かないまま、彼のお父さんと消えてしまった。