優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。
私、やるって一言も言ってないのに。
というか、陣之内くんも親呼び出しなのか。
陣内くんのお父さんはちょっと不愛想で怖い感じで、陽気で表情がくるくる変わる彼と全然似ていなかった。
というか、なんの匂いだろう。
ペンキ? シンナーの匂いが微かにする。塗装系のお仕事なのかな。
「わあああ、陣之内先輩、格好いいですね」
「え」
準備室から出てきた百合ちゃんの目がハートマークになっている。
格好いいと思ってるなら変わってくれたらいいのに。私は熊みたいで怖くて、捕食されかかっていたのを見ていたはずだ。
「でもあんな、チャラい人が携帯小説なんて書くんですね。ランキング上位って文才もあるんですね」
「一位と雲泥の差だったけどね……帰る」
まだ心臓がばくばくしている。見下ろされた瞬間、息が止まるかと思った。
斜め下の、人の目を見ない角度で歩く私に、無理やり視線を合わせてきた人。