優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。
ここからでもデジカメで窓は撮れる。そうしていたら、彼が冷房のボタンを押してくれた。
これで一気に涼しくなる。
「もしかして、窓ガラスの中のプールを今度描くの?」
「う、うん」
――だから、ホラーは描けないの。
そう断らないといけないのに、圧倒的なキラキラした彼の隣に座ったら言い出せない。
「俺がさ、昨日、蕾に描いてって言ったじゃん」
「うん。それだけど」
「やっぱいいわ。殴っても勝てるころには間に合わないし」
「……間に合わない?」
「ん。自分で一回描いてみて、絵の大変さを知ってから、あとは考えるよ」
彼は一人で言って納得して、私なんて置いてけぼりで独り言に満足しているように見えた。ゆらゆらと、窓ガラスに映る、手に掬えないプールの水面のよう。
「じゃじゃじゃじゃん。これで描く」
携帯を取り出して、お絵かきができるアプリを起動すると私に見せてきた。
「これ、背景とか沢山入ってるし、俺、けっこう指長いし、一回描いてみる」
「頑張ってね」
つい嬉しくて笑顔でそう言ってしまう。でも嬉しい。これで私は解放される。いじめられずに済むんだ。
「本当は蕾の描いた絵が欲しいんだけどね」