優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。
「なあ見て、バケツ塗りだって。一発で色が塗れる」
「携帯なのに、すごいね」
画面を覗くと、白かった画面がバケツのアイコンをタッチしてもう一度タッチしただけで真っ赤になった。
「俺の小説は、理不尽な大人をぶっ殺していくんだよな。例えば、地毛なのに髪を染めてるとか、服の中身が派手だからって理由で難癖つけるやつ?」
「それだけで殺すのは、理不尽だよ」
彼の小説の中身はどうなってるのか。怖すぎるけど、覗きたいような覗きたくないような、そんな感覚に囚われる。
「理不尽だけど、大人はそれが許されて俺たちに許されねえんだよ。俺らがセンセイの頭が薄すぎるとかスカートか短いとか、化粧が濃いとか難癖つけたら権力で抑え込まれるんだ」
「うーん。それは言わなくても良いことだよ」
「蕾は面倒だから黙ってればいいと思ってんのか。中学生のくせに老けた考え方だな」
「老けた……?」
「押さえつけられて、本音が言えないならこんな校舎、出荷する工場だ。俺たちは形がよくねえと売れない野菜だ」