優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。


「それ、昨日私も思ってた」
 自分の考えが見透かされていたような気分で驚く。
「お、案外老けてねえじゃん」

 老けた考え方か。オトナに目を付けられるより楽でいいじゃない。

そんな私を知ってか知らずか、目の前で彼は何回も絵を消して、書き直している。
本当の絵は、そんなにやり直しできない。何度も色んな角度から見て恐る恐る色を入れていく。それなのに彼は簡単に言うし、簡単に削除して書き直す。

そっちの方が楽観的でいい加減すぎるのではないか。


「無口になんなよ。怒ったの?」
「いえ。別に。私は写真を撮るので気にしないでください」
「同い年! 敬語やめよーよ」

 怖いので遠慮します、とは言わず諦めて写真を撮る。

窓の中に揺蕩うプールの水は綺麗で、それを閉じ込めたデジカメも綺麗。
でも私のぐるぐるした黒い感情を閉じ込めた私は、黒いから綺麗じゃないんだ。

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