優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。
「例えば国語の竹山とか。あいつ、すぐ自分の恋愛話語りだすじゃん。過去の話なのにさもモテてるように語る三十路の破壊力。あいつ、イケメンには授業中当てても間違えても優しいのに、可愛い女の子には厳しいんだよ」
「そ、そうなの?」
可愛くもなくイケメンではない私は該当していなかったから気づかなかった。
デジカメを片付ける間、紗矢は英語の山口は……とか、体育のゴリラは……とか、数学のおじいちゃんは、とか色々と教えてくれた。
「ね、大人も完璧じゃないし人間なんだよ。先生が絶対に好き嫌いしないってわけはない。だから、尊敬できる人以外はちゃんと自分の意見いうべき。ぶつかるべき。優大を見習いなよ。一年の時、担任蹴飛ばしてるからね、あいつ」
「……それは見習うべきではないような」
蹴飛ばした事件は紗矢に聞いていたので、1、2年の時はクラスが違って安心してたのに。
そういえば紗矢は陣之内くんとは一年のころから仲良かった。怖くなさそうだし話題にもよく出すってことは、好きだったりして。
「まあ蕾は優等生だから仕方ないか。終わった?」
「うん。終わったよ」
「行こう行こう」
急かされて慌ただしく美術室から出て、教室へ戻った。そのころにはクラスにも何人か人影があって安心した。