優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。


 陣之内くんの周りには人がすでに沢山いて、描いていた絵を笑われているようだった。

「それやばくね?」
「えー、なにこれ全然怖くない」
「紗矢、見てよ、これ」
「あー、できたの?」

 紗矢が自然にその中に入るように、私も自然に一人になれた。


 座って窓の外を眺めながら、ゆらゆらと揺れる教室の窓の色を考える。
青に白を混ぜる。それだけではまだ綺麗すぎる。茶色を少したらそうか。パレットに水をたくさん入れて薄めて形だけ先に塗ってしまおうか。


 水彩画は好きなんだけど、先生に繊細過ぎて見えないねって笑われたことがあるから思い切って青を入れてみたい。

 私の中はそれぐらいの悩みでいい。進路と絵の色の出し方と、ただそれだけでいい。
 このまま邪魔されたくないから私は『優等生』でいい。


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