優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。


結局彼の周りは、予鈴が鳴って先生が来るまで賑やかだった。

失礼な言い方だけど、下手な絵を笑われるって嫌じゃないのかな。
私なら上手くいかなかっ手を見られるのは恥ずかしいのに。




「今日は、プールの温度が低くてラッキー。体育館で球技に変更で良かったよね」

ホームルームが終わり、紗矢が背伸びをしながら、嬉しそうに窓の外を見る。
見下ろすと、水面が太陽の光に反射してキラキラと綺麗だった。

揺蕩う水面を見るのも好きだけど、ゴーグルつけて中を泳ぐのも好きだったのに残念。
体育館は暑かったから、絶対にプールに入っていた方が楽しかった。


「うーん。私はさっさと終わらせたかったな。紗矢ちゃん、部活?」

「部活行くけどさあ、朝は駄目って言われたじゃん。だから行っても断られたら、まじむかつく。勝手に走ろうかな」

「ちゃんと反省してますって謝ったら大丈夫だよ」
「でた、蕾の優等生発言。っつたって私あんま悪くないしなあ」


 コンシーラーでピアスの穴を隠していたのは計画的だしなかなか悪いとは思うけど、本人的には反省する必要はないようだ。

 私はさっさと水面の絵に取り掛かりたい。で、中学生最後の作品なのでどこかコンクールに記念応募してみようかな。

 また日常の中の美しさ、みたいなコンクールがあればいいのに。
そんなとりとめのないことを考えながら、教科書を鞄に仕舞い肩に担いだぐらいだった。

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