優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。



「なあ、蕾」
「!?」

日常が日常だと思えるのは、異常を感じた時だ。私は今まさにそれで、異常を感じている。

美術部の部活へ行こうとしていた私に、教室の端から大きな声で呼ぶのは陣之内くんだった。

ミスマッチな組み合わせに他の人たちも驚いている。私だって驚いているしクラスの視線が集中していて怖い。

「これ、授業中に描いたんだけどどこが悪いか指摘してよ」
「え、な、んで私が、ですか?」
「いいじゃん、美術部じゃん」

 心底不思議そうにしているけど、クラス中の視線の方が不思議そうに刺さってくる。私みたいな地味な人間にホームルームが終わると同時に話しかけるってどういう神経をしているの。

「えっと部活があるので、先生に頼んでください!」
急いで逃げると、クスクスと笑い声が聞こえてきた。


「ふられてやんの」
「なに? お前、あんな感じがタイプ?」
「めっちゃ敬語で怖がられてるじゃんか」

クスクスと笑われるそれは、私が馬鹿にされてるのが分かる。地味に目立たなくしてるのに。

誰にも迷惑かけてないのに。どうしてわざわざ燃料になるようなことを言うの。
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