優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。
そう言いながら泳ぎ出した紗矢にひやりとする。
下にズボン穿いてない!
紗矢の短いスカートに、ズボンは仕込めない。
男の子たちは気づいていないけど、なんて格好をしてしまっているんだ、紗矢。
「あいつさ、一年からずっと一緒なんだけど馬鹿だし話しやすいし、いいやつで」
泳いでいた紗矢は、私に背を向けるように立ち止まった。
「中一の時、同じ陸上部の先輩に髪が茶色いって、すげえきつく当たられて、なんで私ばっか厳しくすんだよって部活辞めようかなって時期があったんだ」
その話に、私も固まった。紗矢から聞いていた。
体育会系の部活は、上下関係が厳しいんだな。怖いなって感想しか出なかったし、紗矢はむかつくけど言い返したって笑い話にしていたから。
「で、そいつら差し置いて、リレーの選手に選ばれたとき、またなんか言われる、怖いって、初めて部活に行くのをさぼったんだ。そしたら、あいつがいてさ」
私たちが入ったために汚れてしまったプール。
そのプールに落ちていく水。
一滴一滴、浄化していくような綺麗な涙は水面に波紋をひろげていく。
「お前が美人だからいじめられるんだ。ブスが何を言ってもお前は負けないよって言ってくれて、酷い言い方だなって思ったけど笑っちゃった」
「……うん」