優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。
四、思い出を盗みたい。




教室の中は、葬式並みにしいんと静まり返っていて女子が泣いている。
紗矢はさっきと逆で皆を慰めていて、男子たちはまだ怒っていた。
「なんだよ、あいつ。へたへらしやがって」
「転校のこと、少しぐらい相談してくれたってよかったのに」

怒っているのに、どこか心配している様子で……陣之内君の日ごろの行いが良いせいかさっきの喧嘩はもうなあなあになってしまっていた。

「おい、陣之内はどこにいった!」

織田先生が、再び入ってくる。そして教室中を見てまわったがここには彼はいなかった。
なぜなら大分前に織田先生に連れられて彼は指導室へ行っていたはず。

「あいつが逃げた。鞄を取りに来るかもしれないので、ここで待たせてもらうぞ」

先生のその一言でクラスが一致団結したかのように、蜘蛛の巣掻き分け廊下へ飛び出す。
私も美術部に逃げると、廊下が水滴で濡れているのが分かった。

その水滴が美術室のドアの前で止まっている。

 恐る恐るドアを開けると、やはり陣之内くんは居た。
 しかも後ろに飾っていた私の絵を両手で外そうとしているところだった。

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