優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。

「そのまんまじゃん。オトナは隣の市だからって簡単に言うけど、このクラスじゃいられなくなるってこと。いつもの光景が全部変わってしまうこと。それは距離の問題じゃねえよ。全部自分の意志じゃねえのに、奪われるんだよ。ふざけんな」


 今朝、顔に痣を作っていたのは、昨日の転校手続きについて親と喧嘩をしたってことなのだろう。今も、どうしてもあがきたくて陣之内くんからドスぐらいオーラを感じる。

喧嘩をしてプールを汚してすったもんだがあったせいで、教室は窓枠の影が落ちり、空は少しずつ茜色に染まり、蝉の声も完全に消えていったのに。


「おれ、この絵を描いた奴と同じクラスに慣れてうれしかったのに、そいつ、教室では全然顔をあげないんだ。やっと目が会えた時に、もう視界にはいらないとこに行くとか、すげえ悲しくね? 泣きそうだし」

「……クラスの皆、泣いてたし、離れたくないって怒ってたよ。だから」

「なあ、クラスのやつらが良い奴らしかいないのはよく分かってる」

「……そうだよね。ごめんなさい」

「いや、良い奴しかいないのに、なんでお前はそんな下ばっか見てんの? 何が怖いわけ? 別に転校するわけでもないお前がさ、何を怖がってんだよ」
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