優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。
濡れた髪を乾かす彼は、とても格好いい。モデルみたいな、美しい姿かたちをしている。
「紗矢は、小学校の時から私にも優しかったんです」
「優しいから友達ってわけじゃねえよな。紗矢だって蕾のこと好きだし」
紗矢のことをそんなに理解しているのに、どうして私のことは分からないのかな。
それは、私と彼の間にラインがあるからなのかな。
私と彼の間のライン。綺麗な紗矢がいじめられる気持ちを理解してあげられたのに、私のこの気持ちを理解してくれないライン。
「しょ、小学校の時にメガネザルってからかわれたの」
「メガネザル? だっせ。メガネザルとか小学生だねえ」
「それで学級会でからかった人たちがつるし上げられて……その」
「つるし上げって」
「その……その時間が今も思い出すと変な汗が出てくるぐらい苦しいんです。早く帰りたいのに興味ない話で長引くの。私のせいで」
――メガネザル
そういわれて泣いたら、ブスが泣いたって騒がれた。
泣かないように下を向いて聞こえないふりをして耐えた。
紗矢が男の子と殴り合いのけんかをして職員室の呼ばれたとき、私のことをからかっている男子がいたからと、原因が私のせいだと知った。