優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。


  ああ。
 学級会が開かれて、紗矢がからかっていた男子を全員名指しで反省するように声を荒げた。
 あいつのせいで。

 そんな視線がクラス中から注がれて、消えてしまいたかった。

 その日からメガネザルとは言われなくなったけど、代わりに私に話しかける男子は居なくなって、平穏の中、雑音が私の耳に聞こえてくるようになった。

 人の笑い声が怖い。視線が怖い。でも私は武器を持たないので、目を閉じて石になる。雲になる。漂う金魚になる。動かない絵になる。許されたいと嗤うウソツキな愚者になる。
 
 辛いと叫ぶ人を、どうかだれも笑わないで。


「顔が良ければ眼鏡なんてからかわれないと分かってるんだけど、だから水泳とか皆ゴーグルするから安心すると言いますかその……」

まとまらない上に早口の私の言葉を、『ふうん』と口の中で彼が転がす。

「眼鏡、外すよ」
「ひ、えっ」

 眼鏡を奪われると、一瞬視点が合わなくなったけど、目を凝らすと彼がじっと私を見ていた。
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