優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。



「全然ブスじゃないしメガネ猿でもないし、あ、でもメガネサル超かわいいし。――もし俺のクラスでそれ言う奴がいたら、俺がまたプールに突き落としてやるよ」

「そ、それは駄目! 受験前に喧嘩は駄目」
「分かった。卒業後のお礼参りだな」
「それも違う!」

自分でも驚くぐらい大きな声が出た。口を押さえると陣之内くんは、絵を机においてバンバンと机をたたきながら笑った。


「やべえ。蕾の大声初めて聞いた。超レア! 動画に撮れば良かった」
「や、やだ!」

動画なんて嫌だと叫ぼうとして、先に彼が大声を出した。

「やべえ! 携帯! あいつらに弁償させねえと親父に怒られるじゃん」
「そ、うだね。でも教室は皆、いないよ。先生がきたから逃げだした」
「先生まだいんの? じゃあ上靴で帰ろうかな。同じ台詞ばっかうぜえんだわ」

 濡れた靴をゆらゆら揺らしながら、私の外した絵を抱きしめて笑う。

 あれだけのことをして反省しないで先生がうざいと言えるその性格は少しどうかと思う。
 言わないけど。沈黙は金雄弁は銀なんだ。

「あーあ。せっかく描いてたのに絵も消えちゃった」
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