優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。

「でも高校で再会できるかもしれねえし」
「そうだよ。どちらにせよ、高校はバラバラだしね」


 紗矢のフォローに入り、彼もまだ納得はしてなさそうだけどその日は落ち着いていた。
 他のクラスメイトが驚くほど、落ち着いていて少し奇妙だった。


 話しかけたら普通に笑うし、輪の中には当然いるのはいる。
なのに彼はなぜか静かで、ピンと張り詰めたピアノ線のようだった。




「優大の様子がおかしい?」
昼休みに紗矢にそう言ってみたが、首を傾げられた。
「あいつはあんなもんよ。昨日がおかしかっただけでしょ」
「そ、うなのかな。でも、なんか、変」

「うーん。あれじゃない。織田に昼休み呼び出し食らってるから怠いんじゃないかな」

 そういうと、紗矢は昨日のことなんて忘れたかのように部室へ向かっていく。
私も部室に届いてあるはずのパソコンで、インストールを色々して絵の準備に取り掛かろうと思っていた。


――彼を見つけるまでは。

「やっほ。お邪魔してるよ、蕾」
< 66 / 197 >

この作品をシェア

pagetop