優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。
「え、鍵は?」
鍵の閉まった美術室に、なぜか彼が平然として座っていた。
手には代用品の一つ古い型の携帯を持っている。
「上の小窓から侵入した」
悪びれもせずに言いのけた後、携帯に視線を向けている。
「昨日更新できなかったから、ランキング落ちてる。12位とかまじシビア。一日更新しなかっただけでなんで二桁に落ちんだよ。ありえねえ。あ、鍵閉めてね」
「!」
彼と二人きりなのに鍵をかけるなんてできるはずない。
「お願い。織田に見つかったらうるせえじゃん」
ね、と言われ覚悟を決めて鍵をかけた。
「だらだら続けてきたから1200ページもあんの。ひくだろ?」
「……で、でも一ページの文字が少ないよね。300字もないぐらい?」
「何で知ってんの。見てくれた?」
ガバっと携帯から顔をあげた彼に、私は頷く。
「徹夜で読んだよ。……大人がばっさばさ殺されていくのは、怖かった」
「爽快だろ」
「織田先生って作中でまんま出してる?」
「そ。一番最初に簡単に死んだでしょ」