優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。



ハッと気づいて口を押えた時には、もうすでに百合ちゃんには聞こえてしまった後だった。
どうしてそう思ってしまったんだろう。


「いや、その、受験生なのに遊んでいいなって、へへ」
「プールですよね。結局あれ、喧嘩じゃなくて優大先輩が引っ越すからってあそこでさよならパーティーしてたんですよね? 驚きました」

 百合ちゃんは言いながら、筆が胸元のエプロンをかすめてしまって慌ててタオルで拭き取っていた。

 私はパレットに筆を突き刺して、座ったまま百合ちゃんの方を向き直り、太ももに手を置いた。


「あの、あのね、正直に答えてほしいんだけど」
「はい」
「わ、私の考え方って、老けてる?」

 外の声を聞きながら、そんなくだらない質問をしてしまった。


 でも百合ちゃんはあっけらかんというか、驚く様子もなく笑うこともせず、真面目に答えてくれた。

「老けてませんよ。大人は部長みたいな真面目な生徒になってほしくて校則がきついんでしょ。部長は大人の理想像だと思います」
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