優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。


「もし部長の友達で必要な人がいたら、二つ返事であげます」
「あはは。聞いてみるね」

そうか。私は絵を描くのは好きだけど、描くのが好きってだけでこだわりは特になかった。

だから百合ちゃんがデジタルが嫌って気持ちが少しわかるけど、同調はできないんだなって思ったんだ。

「こらー! 真面目にやらんか!」


窓の外で、男子たちが『きゃー』っとふざけた声をあげている。

体育の織田先生は熊みたいに体も大きいし、やくざみたいに目つきも悪いし、私は目を見て話すのが怖いぐらいいつも不機嫌そうな先生だ。

その先生に怒られてもまだへらへらしてるの、すごいなって素直に思う。

「そうそう。先生が職員会議から帰ってきたら、夏休みに行く、美術館の計画立てましょうって」
「う、うん」

 理解できないことを、否定するんじゃなくて知りたい、と思った。

『孤独な戦いだ。俺だけだ』

 彼のあの言葉。あの言葉を、水彩画とデジタル画にたとえたらいけないけど。
 彼はどうしても転校したくなくて、親と殴り合いのけんかだってしてる。

 でもそれを誰もわかってあげていないんだ。どんな気持ちで、一人で戦っていたのか。いつから戦っていたのか、叫んでいたのか。
 そんなの私には分からないけど。

「やべー、まじでやべー。ヘルプミー!」
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