優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。
ひい。思わず小さな声が出てしまった。
足元で笑い転げていた陣之内くんは、必死で手で大きく×を作っている。
うーん。陣之内くんのしたことを考えると庇う必要は全くないんだろうけど、私は横に首を振った。
「い、いいえ。この窓はその、あれなんです。油絵の匂いを消すために換気目的で開けただけで、見てもないです!」
心臓がいつもの10倍以上はやく鳴った。どんどん早く鳴っていく。
嘘を吐く、しかもルールを決めている大人に嘘を吐く。
庇う必要もないのに。
分かっているのに、口から出てしまったんだから私の責任だ。
ドキドキして、足も震えていた。
「そうか。もし見かけたらすぐに教えてくれ」
「は、い」
はやくどっか行って。口から心臓が飛び出てしまいそうで怖いんだもの。
「ん?」
踵を返そうとした先生が私をもう一度見る。
「もう部活は引退している時期だよな。お前、美術室で何をしてるんだ?」
「え、あの、えっと」
「お前は成績に問題ないが、油断してると夏休み後に追い上げてきた奴らに抜かされるぞ。図書室なら三年に開放してるだろ」
ひいい。機嫌が悪い時に絡まれてしまった。
嘘を吐いた私が悪いんだけど、私にまで言わないで。
どうしよう。もう美術室で作業できない。
「部長、部長の絵はもうこれだけみたいです」