優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。
「百合ちゃん……」
ナイスタイミングで現れた百合ちゃんが、私のではない絵を紙袋にまとめていく。
「先生、こんにちは。今、引退した先輩の私物を取りに来ていただいてたんですが、どうかしたんですか?」
機転が利くというか、流石百合ちゃんだ。
「優大先輩なら、さっき渡り廊下で見ましたけど」
「ああ、ありがとう。じゃあ部活頑張れ」
飛び出る寸前だった心臓が、口からずるずる戻っていく気分だ。
ああ、怖かった。
「部長が優大先輩をかばうとは思いませんでした」
「だって、必死だったしって、陣之内くんは?」
足元にいたはずの陣之内くんは、いつのまにか消えていて、美術室のドアが開いていた。
「おだせんせーが、やつあたりで女子生徒に嫌み言ってるのうけるんですけどー!」
「あ、渡り廊下」
渡り廊下まで逃げていた陣之内くんが、再び織田先生に追いかけられだした。
それをただただ呆然と見てしまっていた。
「えっと百合ちゃん、巻き込んでごめんね」
「いいえ。私、織田先生、好きじゃないんです。頭ガッチガチのクソジジイ」
「百合ちゃん……」
百合ちゃんみたいに優等生みたいな子でも、そんなことを言うとは思わなくてちょっとだけ焦った。