優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。

中学三年。中学最後の夏が始まった。

宿題が増えて、受験についての心構えについての授業が増えて、面接とテストが増えて、自由が無くなった。

 部活も運動部の方は引退している人たちもいる。美術部の私は後輩が少ないのをいいことにまだ顔を出しているけど。
そうしないと、普通のふりが疲れて、爆発しそうになるから。

 普段から服装は地味な自分に合わせているから引っかかることはない。だから楽しくない時間、楽しいことを考えよう。

今日は新しい絵を描きたい。窓ガラスに映るプールの水面を描いてみたかった。
 だから服装検査を終わらせてさっさと殻に閉じこもりたい。

 柔剣道場に着くと、上靴を脱いで畳の上にクラス順の出席番号で並ぶ。
 小さな町の公立だけあって二組しかないのにわざわざここに移動してこなくても良いとは思った。

「両手の平を見せて立って。髪は耳にかけて。よしと言われた人は帰っていいから」
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