優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。
「それに部長がいなくなると部活、寂しいですし」
「百合ちゃん……邪魔じゃないの?」
「全く。部長と絵を描いているときの沈黙は好きですよ」
一人で自由でいいって、友達も勧誘せずに一人で絵を黙々描いていたから、引退しないで申し訳ない気持ちでいたので、とても嬉しかった。
「あーやっべ。あのじじいしつこいから、帰るわ」
「きゃあっ」
今度は倉庫の窓から現れた陣之内くんに驚く。
神出鬼没。さっき渡り廊下に居たくせに。
「悪いな、蕾。さっき助かった」
「あ、いえ。でも、先生は陣之内くんのために怒ってると思うので、冷やかすのはいかがかと」
「まじめー。あんなん、俺のことむかついて、苛々して叱り飛ばしたいだけってば。てか俺のせいで絵が描けなかったんじゃねえの。すまん」
「いえ、その、私、本当に心配して言ってるんです!」
なあなあにして帰ろうとする陣之内くんの濡れた塩素の匂いがする腕を掴む。
「私、私、理解はできないけど否定はしません。力になれることはほぼないですけど、でも一人で戦うとか、言わないでほしいです」