優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。
何を言いたかったのか忘れてしまった。
さっきまで考えていた気持ち、思いは緊張のあまりぶっ飛んでしまった。
何が言いたかったんだっけ?
「えーっと、私は邪魔?」
百合ちゃんが視線をさ迷わせて困っていた。
「邪魔じゃないです。ただ、どうしても言いたくて」
ポタポタと髪から水が落ちている。
どんな顔をしているのかなって、私は初めて勇気を出して彼の顔を見上げた気がする。
すると、いつものおちゃらけた表情じゃない。
穏やかで優しい目をした陣之内くんが、私を見ていた。
「絵を依頼しといてこんなこと言うのあれだけど、今日はもう一緒に帰ろうぜ」
「え、一緒にって」
「デート。デートしよ。裏の駄菓子屋の前に10分後に集合な」
百合ちゃんの黄色い声を合図に、陣之内くんは走り出した。
濡れた服を着替えに行くのだろう。
けど、ええええええ。
「なんでデート?」
「部長の言葉が嬉しかったんですよ。てか美術室まで来て、部長に絵を依頼に来る人ですよー。意味わかってるでしょ」