優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。
うりゃっと肘でつんつんされたけど、私はデートという聞きなれない言葉に固まっていた。
どうして。
私と?
お、お金!?
応援してるなら金を出せ?
「先輩、ごちゃごちゃ考える前にほら、帰りの支度」
百合ちゃんが、お母さんみたいに私のエプロンを外し、カバンを手に持たせてくれた。
ペンタブは倉庫の鍵がかかるロッカーの中に入れて、鍵を再び握らせてくれた。
「さ、部長、2分経過しました」
「ど、ど、どうしよう、おか、おかね?」
「もー。うじうじ言わないで、さっさと行って、ほら」
美術室を追い出され、尚且つ中から鍵をかけられて追い打ちをかけられる。
デート?
私は今まで縁がなかった言葉に、頬をつねる。
頬は痛くて、じんじんと痛みが胸に移っていったのだった。