優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。


うりゃっと肘でつんつんされたけど、私はデートという聞きなれない言葉に固まっていた。
どうして。

私と?

お、お金!?
応援してるなら金を出せ?

「先輩、ごちゃごちゃ考える前にほら、帰りの支度」


 百合ちゃんが、お母さんみたいに私のエプロンを外し、カバンを手に持たせてくれた。
 ペンタブは倉庫の鍵がかかるロッカーの中に入れて、鍵を再び握らせてくれた。

「さ、部長、2分経過しました」
「ど、ど、どうしよう、おか、おかね?」
「もー。うじうじ言わないで、さっさと行って、ほら」

美術室を追い出され、尚且つ中から鍵をかけられて追い打ちをかけられる。

デート?

私は今まで縁がなかった言葉に、頬をつねる。
頬は痛くて、じんじんと痛みが胸に移っていったのだった。

< 82 / 197 >

この作品をシェア

pagetop