【甘すぎ危険】エリート外科医と極上ふたり暮らし
ライフラインが使えないってことは、火は使えないし夜は真っ暗ってことなのだろうか。それが本当だとしたら、ここで生活できないじゃないと磐田さんに目で訴えかけた。

でも磐田さんは、
「ついでにリフォームもしちゃうから、一ヶ月くらい他所で暮らしてもらえる?」

もちろんその間の家賃は要らないからと言って、磐田はそそくさとどこかへ行ってしまった。

「そんなぁ……」

体の力が抜け、その場にヘナヘナと座り込みがっくりと項垂れる。

他所で暮らしてなんてそんなこと、簡単に言ってもらっても困る。この十二月の寒い中、イベントごとの多いこんな年の瀬に、アパートを追い出されるハメになるなんて誰が思う?

とは言っても、彼氏もいないわたしには、イベントごとは何の関係もないけれど……。

でも、ほら、寒さは困るでしょ。こんな時期に外で暮らしたら凍死しかねない。いや、絶対に凍死する。

愛佳総合病院は郊外の高台にあって、その麓には田畑が広がっている。ここはいわゆる田舎の小さな町で、今住んでいるアパートを探すのにも苦労したくらい、これと言ったものがない地味な町だ。

そんなところで他に暮らせる場所なんて、どこにあるっていうのよ!

凍死する前に住むところを探さないと──と頭を抱えたが、ふと園枝さんの顔が脳裏に浮かんだ。



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