【甘すぎ危険】エリート外科医と極上ふたり暮らし
腹が立つのに怒れない。それどころか体は真澄さんが発した『うんと甘やかしてやる』に反応して、勝手に火照り始める。
どうしてくれるのよ──。
小さく息を吐き真澄さんの甘い声が残る耳を塞ぐと、姿勢良く歩く彼の背中を見つめた。
「乙葉さん。お昼どうしますか?」
午前の受付を終え、乙葉さんに声を掛ける。
「そうねぇ。休憩時間ちょっと減っちゃったし、職員用の食堂にする?」
休み明けの月曜日は仕事が立て込んでしまって、休憩時間にまで割り込んでしまうこともしばしば。とは言っても普段の休憩時間が一時間半と長く、今日もまだ一時間近くは残っているけれど。
「そうですね。外に出るのも億劫ですし」
天気はいいけど、如何せん外は風が強くてとてつもなく寒い。こんな日はどこもかしこも温かい、病院内にいるのが一番安心で幸せだ。
いつもの通りに引き出しから財布やスマホが入った小さなバッグ取り出すと、それを小脇に抱える。
「今日のランチはなんでしょうね、乙葉さん」
「う~ん。月曜だし、魚がメインじゃない?」
他愛のない会話をしながら、旧病棟の奥にある職員用の食堂へと向かう。と、目前にある食堂のドアから、田所先生が出てきた。
「あ! 高梨さん!」
突然大きな声で名前を呼ばれ、辺りをキョロキョロ見渡した。